就労移行支援では、就職定着率をもとに基本報酬が設定されます。
今回は、就労移行支援基本報酬の計算方法をご説明いたします。
※「年間」と「年度」の違いにご注意ください。
就職定着について
就職定着とは「就職後、6か月継続して仕事をすること」を指します。
6か月の継続を達成したタイミングで、就職定着としてカウントすることができます。
就労定着について、くわしくはこちらをごらんください
まずは 基本を確認
まずは、基本ルールを確認しましょう。
就労移行支援の基本報酬は、利用者の就職定着率をもとに算定されます。
前年度と前々年度の実績を用います。
◇前年度の就職定着者数+前々年度の就職定着者数=A
◇前年度の利用定員+前々年度の利用定員=B
◆A÷B=就職定着率
計算例を見てみましょう。
【例】
◆令和5年度の基本報酬を計算
◇利用定員:20名
◇令和4年度 就職定着者数:9名
◇令和3年度 就職定着者数:2名
【上記計算式にあてはめると】
(A)9名+2名=11
(B)20+20=40
11÷40=0.275(27.5%)
つまり
「2割以上3割未満」となります。
(20名定員の場合、基本報酬は690単位です)
このように、就職定着者が多ければ多いほど、基本報酬が増えるしくみになっています。
基本報酬算定の例外
では次に、例外を見ていきましょう。
◆1.新規指定申請時
◆2.新規指定から1年経過後
◆3.新規指定から2年経過後
◆4.年度途中で指定がおりた
例外1.新規指定申請時(1年目)
新規指定申請時は、前年度の実績がないので、基本ルールの計算式が使えません。
ですので、次のように決められています。
【新規指定から2年間】(2年目が終わるまで)
「3割以上4割未満」として扱う
新規指定から2年間は、実績に関係なく「3割以上4割未満」として、基本報酬を算定することができます。
例外2.新規指定から1年経過後(2年目)
先述したとおり、新規指定から2年間は「3割以上4割未満」とすることができます。
ですので、1年経過後も「3割以上4割未満」としても構いません。
しかし、開業1年目と違って、2年目に入った時には、1年分の実績が存在します。
2年目は、この1年目の実績を用いても構いません。
【例】
◆開業2年目
◇定員:20名
◇1年目の就職定着者数:9人
9÷20=0.45(45%)
この場合、「4割以上5割未満」の基本報酬を取得することができる
どちらか単位の高い方を選ぶことができます。
例外3.新規指定から2年経過後(3年目)
新規指定から2年間が経過すると、過去の実績をもとに基本報酬を算定します。
さきほどまでのように、無条件に「3割以上4割未満」とすることはできません。※
※もちろん、実際に3割以上4割未満の実績があれば、算定することができます。
新規指定から2年間が経過した場合は、次のどちらかの計算式を用います。
【1】冒頭でご説明した「A÷B=就職定着率」
【2】◇利用定員の3割+2年目の就職定着実績=C
◇前年度の利用定員+前々年度の利用定員=B
◆C÷B=就職定着率
では、【1】と【2】で、どのように差が出るのか確認してみましょう。
【例】
◆令和5年度の基本報酬を計算
◇利用定員:20名
◇令和4年度 就職定着者数:9名
◇令和3年度 就職定着者数:2名
【上記【1】の計算式にあてはめると】
(A)9名+2名=11
(B)20+20=40
11÷40=0.275(27.5%)
「2割以上3割未満」として算定する
【上記【2】の計算式にあてはめると】
◇定員20名×30%=6
(C)6+9名=15
(B)20+20=40
15÷40=0.375(37.5%)
「3割以上4割未満」として算定する
このように、実績によっては差が出ることになります。
この場合も、単位の高い方を選ぶことができます。
例外4.年度途中で指定がおりた
年度途中で指定がおりた場合は、【例外3】の「2年経過後(3年目)」の期間が短くなります。
3年目の4月を迎えた段階で、【例外3】の計算式を使うことができなくなります。
これは、3年目の4月を迎えることで、前年度と前々年度の実績が出そろうためです。
【例】 | |
◆令和2年12月に指定がおりた場合 | |
【1年目】令和2年12月 ~ 令和3年11月 | 【例外1で算定】 |
【2年目】令和3年12月 ~ 令和4年11月 | 【例外2で算定】 |
【3年目】令和4年12月 ~ 令和5年3月 | 【例外3で算定】 |
【3年目の途中 以降】令和5年4月 ~ | 【基本ルールで算定】 |
【参考例】 | |
◆令和2年4月に指定がおりた場合 | |
【1年目】令和2年4月 ~ 令和3年3月 | 【例外1で算定】 |
【2年目】令和3年4月 ~ 令和4年3月 | 【例外2で算定】 |
【3年目】令和4年4月 ~ 令和5年3月 | 【例外3で算定】 |
【4年目以降】令和5年4月 ~ | 【基本ルールで算定】 |
このように、差が出ます。
制度を正しく把握しましょう
誤った知識のまま運営を続けると、収支計画が大きく崩れることになってしまいます。
また、報酬の返還や指定の取り消し(営業停止)にもつながりかねません。
そうなってしまわないように、正確な知識をつかんでおきましょう。
就労移行支援に関するお困りごとは、こちらへご相談ください。
15年間の障害福祉経験を活かし、お手伝いをさせていただきます。