あなたは「福祉事業所」と聞いて、次のうち、どちらを思い浮かべますか?
■障害福祉
■高齢者福祉
どちらも、同じ「福祉」ですが、その内容は異なります。
では、福祉事業所の指定申請は、誰に相談すればよいのでしょうか。
今回は「指定申請の相談は、誰にすればよいのか」を見ていきましょう。
実は それぞれ担当できる人がちがう
まず、結論から申し上げます。
■障害福祉事業所 ⇒ 行政書士
■高齢者福祉事業所 ⇒ 社会保険労務士
このように、法律で決められています。
【禁止】
■行政書士が、高齢者福祉事業所の指定申請をすること
■社会保険労務士が、障害福祉事業所の指定申請をすること
ですので、指定申請の相談を誰にするのか、注意する必要があります。
社会保険労務士と行政書士 両方の資格がある場合
この場合は、どちらの資格も有しているため、障害・高齢者福祉どちらも扱うことができます。
事務所名が「社労士事務所」となっていても、その社労士が、行政書士登録もしていることがあります。
その場合は、障害福祉事業所の指定申請もすることができます。
事務所の名前だけで決まるわけではないので、その点にも注意が必要です。
間違えて依頼してしまった場合
もし、あなたが間違えて(知らずに)依頼をしてしまった場合は、どうなってしまうのでしょうか。
基本的には、あなたが責任を問われることは考えにくいです。
しかし、これらの事情を知った上で依頼した場合や、なにかしらの悪質な行為があった場合は、その限りではないでしょう。
また、このような正しい専門知識を持たない士業に、指定申請を依頼することは危険です。
なぜなら、正しい知識を持たないということは、指定申請に手間取り、誤った申請をしてしまう危険性があるからです。
場合によっては、開業予定日に間に合わないようなことも起こり得るでしょう。
障害福祉サービス事業所の指定申請は 行政書士へ
■障害福祉事業所 ⇒ 行政書士
■高齢者福祉事業所 ⇒ 社会保険労務士
これを忘れずに、それぞれ適切な専門家へ依頼するようにしましょう。
障害福祉サービス事業所のお困りごとは、障害福祉専門の行政書士へご相談ください。
15年間の障害福祉経験を活かし、あなたの事業のお手伝いをいたします。
【参考】根拠となる法律と 私の解釈
私が、このように法律を解釈した根拠を記載します。
お時間のある方、ご興味のある方は、ごらんください。
社会保険労務士(社労士)の業務
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=343AC1000000089_20230401_504AC0000000004#Mp-At_2
法律って、本当に読みづらいですよね……。
上記、引用文をざっくりとまとめると
「別表第一に書いてある、労働、社会保険に関する法令に基づいて申請書を作成すること」
これが社会保険労務士の仕事であると定義づけられています。
※今回のテーマに関する部分のみ引用しています。
実際の社労士業務は、多岐にわたります。
そして、別表第一には、以下のように、介護保険法と記載があります。
【別表第一】
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=343AC1000000089_20230401_504AC0000000004#343AC1000000089-Mpat_1
(略)
三十一 介護保険法
eーGOV 社会保険労務士法
さらに、介護保険法の第八条に、高齢者福祉に関する事業所のことが定められています。
(長文のため、引用はせず、リンクのみ貼ります)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=409AC0000000123#Mp-At_8
eーGOV法令検索 「介護保険法」
つまり、社会保険労務士法には「高齢者福祉の事業所に関する申請書は、社会保険労務士の仕事ですよ」ということが書かれています。
そして、この別表第一には、障害福祉サービス事業所の根拠法である「障害者総合支援法」のことは書かれていません。
これは「社労士は、障害福祉サービス事業所の申請書を作成することができない」ということを意味します。
行政書士の業務
では、行政書士の業務についても、確認していきましょう。
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC1000000004#Mp-At_1_2
本当に、読む気なくしますよね……。
これを、簡単にまとめますと
【1】行政書士は、官公署に提出書類を作成することができる(=とても広範囲)
【2】でも、他の法律に書いてあることは、してはいけない
ということになります。
【1】だけならば、高齢者福祉の事業所に関する書類を作成しても問題ありません。
しかし、【2】を読むと「他の法律で制限されていることは禁止」とされています。
他の法律(=社会保険労務士法)に、高齢者福祉の事業所の申請について書かれています。
ですから、行政書士は高齢者福祉の申請に手を出してはいけない、ということになります。
そして、障害福祉サービス事業所の根拠となる「障害者総合支援法」に関する申請は、他の法律で制限されていません。
つまり、障害福祉サービス事業所に関する申請書の作成は、行政書士の業務ということです。
ざっくりとまとめると
■行政書士は、官公署に提出する書類を作成することができる。
(他の法律で制限されているものはダメ)
■社会保険労務士は、介護保険法に基づく申請書の作成をすることができる
(高齢者福祉の事業所は、介護保険法に定められている)
社会保険労務士は、高齢者福祉の事業所の指定申請ができるため、行政書士は手出しをしてはいけません。
つまり、冒頭でもお伝えしたように
・障害福祉事業所 ⇒ 行政書士
・高齢者福祉事業所 ⇒ 社会保険労務士
という結論になります。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。